歯科治療後の痛み止め|ロキソニン・ボルタレン・カロナールの違いと選び方【麻布十番歯科オーラルケア】

歯科治療後の痛み止め:当院がカロナールを第一選択とする理由
麻布十番歯科オーラルケア
歯科治療後、多くの患者さんが痛みや腫れの緩和を必要とします。痛み止めには大きく分けて「NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)」と「アセトアミノフェン(カロナール)」の2系統があります。当院では、腎臓への安全性を重視し、35歳以上の患者さんには原則としてカロナール500mgを第一選択とする方針をとっています。本コラムでは、その理由と背景をご説明します。
NSAIDsとカロナールの根本的な違い
ロキソニン(ロキソプロフェン)・ボルタレン(ジクロフェナク)はともにNSAIDsであり、体内でプロスタグランジンを産生する酵素・シクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害することで炎症と痛みを抑えます。この作用は非常に強力ですが、同時に腎臓の血流を守るプロスタグランジンまで抑制してしまうという問題があります。その結果、糸球体の輸入細動脈が収縮し、腎血流量と糸球体濾過量(GFR)が低下します。これが薬剤性腎障害(DKI)の主な原因です(日本腎臓学会誌, 平田ら, 2016)。
一方、カロナール(アセトアミノフェン)は主に中枢神経系でプロスタグランジン合成を抑制し、鎮痛・解熱効果をもたらします。末梢の腎組織にはほとんど作用しないため、腎血流を損なわないという大きな特長があります。同論文では「アセトアミノフェン単剤を適正に投与している限り、NSAIDsに比し腎障害を起こさない安全な鎮痛薬である」と明記されており、米国腎臓財団もCKD患者の鎮痛薬としてアセトアミノフェンを公式に推奨しています。
なぜ35歳以上からカロナールを第一選択とするのか
腎機能(GFR)は、一般に健常成人でも30歳代半ば以降、生理的に緩やかな低下傾向をたどることが知られています。血液検査が正常範囲内であっても、腎臓の予備能は加齢とともに少しずつ低下していきます。
さらに35歳以降は、初期高血圧・脂質異常症・耐糖能異常などの生活習慣病の罹患率が上昇し、降圧薬(ARB・ACE阻害薬)や利尿薬の処方機会も増えます。NSAIDsとこれらの薬を併用すると、「Triple Whammy(トリプルワーミー)」と呼ばれる相乗的な腎障害リスクが生じることが知られています。こうした背景を踏まえ、当院では50歳・65歳以降に重篤な腎機能障害が顕在化するのを待つのではなく、35歳の段階から予防的にカロナールへ移行することを院内方針としています。なお、この「35歳」という基準は特定の論文やガイドラインが定めたものではなく、当院が予防的な観点から独自に採用している方針です。
カロナールは「効かない薬」ではありません
かつて国内では1回200~300mgという過小投与が慣習化しており、「カロナールは効かない」という誤解が広まっていました。しかし適正用量である1回500mgを使用した場合、歯科領域の疼痛に対してNSAIDsと同等程度の鎮痛効果が得られることが報告されています。
当院では成人に対し「1回500mg、必要に応じて1日2回(1,000mg/日)」を基本とし、効果不十分な場合は増量を検討します。1日4,000mgを超える過量投与では肝障害のリスクがありますが、1,000mg/日程度の常用域では高い安全性が確保されています。
当院の処方方針
35歳以上の患者さん(原則)
→ カロナール500mg
強い急性炎症(抜歯後の強い腫れ等)、短期限定
→ ロキソニン・ボルタレン(腎機能確認後)
NSAIDs禁忌・不耐症の方
→ カロナール500mg
降圧薬・利尿薬・SGLT2阻害薬を服用中の方、腎機能に不安のある方は、必ず処方前にお申し出ください。患者さんの長期的な腎臓の健康を守ることが、当院の処方方針の根幹です。
監修者 鳥居 秀平 医療法人社団 悠和会 北野坂鳥居歯科医院/理事長
「医は仁術」の理念に基づき、患者様の気持ちに寄り添い、誠実で愛情ある治療を行うことを大切にしています。当院では、患者様の不安や希望を伺い、その方に適した治療を提供することを重視しています。オペ室や歯科用CT、マイクロスコープなどの設備を整え、安全で信頼できる治療環境を整えており、スタッフ一同、患者様の大切な歯を守るために努めております。
略歴
- 1994年 日本大学松戸歯学部卒業
- 1996年 英国マンチェスター大学研究在籍
- 1998年 国立大学 東京科学大学大学 歯学部 文部教官
- 1998年 東京科学大学付属歯科衛生士学校 講師
- 1999年 国立大学法人 東京科学大学大学院医歯学総合研究科
顎顔面機能再建学系専攻 文部科学教官 - 2001年 北野坂鳥居歯科 開業
所属
- 日本口腔インプラント学会 専門医、指導医
- アジア口腔インプラント学会 認定医
