根管治療で使う黄色いペースト「ビタペックス」とは?

むし歯が深くなって歯の神経まで感染すると、「根管治療」と呼ばれる歯の根の治療が必要になることがあります。その際、細く複雑な根管の中へ入れる材料の一つが「ビタペックス」です。今回は、ビタペックスの役割や成分、どのような場面で使用されるのかを患者さん向けにご紹介します。
そもそも根管治療とは?
歯の内部には、神経や血管が通る「根管」という細い管があります。深いむし歯や外傷などで神経が強く炎症を起こしたり、細菌に感染して壊死したりした場合には、感染した組織を取り除き、根管内を洗浄・消毒します。その後、細菌が再び入り込まないように根管を材料で満たし、歯を封鎖します。
ビタペックスは、この根管内の消毒を助けたり、治療後の空間を満たしたりするために用いられるペースト状の歯科材料です。
黄色の正体は「ヨードホルム」
ビタペックスの主な成分は、水酸化カルシウムとヨードホルムです。黄色く見えるのは、ヨードホルムの色によるものです。
水酸化カルシウムは強いアルカリ性を示し、根管内で細菌が活動しにくい環境をつくるとともに、根の先にある組織の治癒を助ける目的で広く使われています。ヨードホルムには抗菌作用があり、レントゲンに写りやすくする役割もあります。異なる特徴を持つ2つの成分が、根管治療を支えます。
細い根管にも入れやすいペースト状の材料
ビタペックスは、あらかじめ練られた状態でシリンジに入っています。細いチップから注入でき、複雑な根管の奥まで材料を届けやすいことが特徴です。また、レントゲンに白く写るため、どこまで入っているかを治療後に確認できます。
固まらない材料なので、感染の状態に応じて一時的な根管内の薬として使用し、後日の治療で取り除くこともあります。一方、乳歯の根管充填材として用いられる場合もあります。乳歯の根は永久歯への生え替わりに合わせて自然に吸収されるため、硬く固まらず吸収されやすい材料が選択肢になります。
大人の歯と子どもの歯では使い方が異なります
乳歯の根管治療では、水酸化カルシウムとヨードホルムを組み合わせた吸収性の材料が選択肢の一つとしてガイドラインにも挙げられています。ただし、すべての乳歯に同じ材料が適しているわけではありません。歯の生え替わりまでの期間、根の吸収状態、感染の広がりなどを確認して選びます。
永久歯では、ビタペックスを治療途中の薬として使う場合もあれば、最終的な根管充填にはガッタパーチャなど別の材料を使用する場合もあります。使用目的や期間は、歯の状態によって異なります。
ビタペックスだけで治るわけではありません
根管治療で最も重要なのは、感染した組織を丁寧に取り除き、根管内を十分に洗浄・消毒し、最後にすき間なく封鎖することです。ビタペックスは治療を支える有用な材料ですが、薬を入れるだけで感染が必ず治るわけではありません。
また、材料を根の外へ必要以上に押し出すと周囲組織を刺激する可能性があるため、根管の長さや形を確認しながら慎重に使用します。治療後もレントゲンなどで経過を確認することが大切です。
麻布十番歯科オーラルケアでは、歯の状態を詳しく診査し、治療段階や根管の形に合わせて使用する薬剤・材料を選択しています。根管治療の材料や治療期間について気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。
監修者 鳥居 秀平 医療法人社団 悠和会 北野坂鳥居歯科医院/理事長
「医は仁術」の理念に基づき、患者様の気持ちに寄り添い、誠実で愛情ある治療を行うことを大切にしています。当院では、患者様の不安や希望を伺い、その方に適した治療を提供することを重視しています。オペ室や歯科用CT、マイクロスコープなどの設備を整え、安全で信頼できる治療環境を整えており、スタッフ一同、患者様の大切な歯を守るために努めております。
略歴
- 1994年 日本大学松戸歯学部卒業
- 1996年 英国マンチェスター大学研究在籍
- 1998年 国立大学 東京科学大学大学 歯学部 文部教官
- 1998年 東京科学大学付属歯科衛生士学校 講師
- 1999年 国立大学法人 東京科学大学大学院医歯学総合研究科
顎顔面機能再建学系専攻 文部科学教官 - 2001年 北野坂鳥居歯科 開業
所属
- 日本口腔インプラント学会 専門医、指導医
- アジア口腔インプラント学会 認定医
