詰め物を「固める光」─光照射器と修復治療の質|お知らせ

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詰め物を固める「光」の正体とは?光照射器と修復治療の質

実際に使用している光照射器の画像

詰め物を「固める光」─光照射器と修復治療の質

 

むし歯の治療で、削った部分に白い材料(コンポジットレジン)を詰めたあと、歯科医師が青白い光を数秒間当てているのを見たことはありませんか。あの光を出す機械が「光照射器」です。何気ない一場面に見えますが、実はこの光の当て方ひとつで、詰め物の丈夫さや長持ちする期間が大きく変わることをご存じでしょうか。

 

コンポジットレジンはなぜ光で固まるのか

コンポジットレジンは、歯科用の樹脂とごく微細なセラミック粒子を混ぜ合わせた材料です。この樹脂の中には、特定の色の光だけに反応する成分があらかじめ含まれています。青白く見えるあの光は、実はこの成分と反応しやすいように波長を絞った特殊な光で、光が当たることで成分が反応を起こし、ペースト状だった樹脂が鎖のようにつながって硬い状態へと変化します。この反応を「重合」と呼びます。

つまり光照射器は、単に表面を照らしているのではなく、材料の中の化学反応そのものを引き起こす道具です。光の強さや当てる時間が足りないと、この反応が途中で止まってしまい、表面は硬そうに見えても内部は柔らかいまま、ということが起こり得ます。

面白いのは、この反応が「光が当たっている間だけ」ではなく、光を止めたあとも数分間はゆるやかに続くという点です。そのため、治療直後の詰め物はまだ完全に硬くなりきっていない状態で、少しずつ強度が上がっていきます。この性質を踏まえ、治療の直後は硬いものを強く噛むことを避けていただくようお願いすることがあります。

 

「一度に厚く詰めない」現場の工夫

光は表面に近いところほどよく届き、深くなるほど弱まっていきます。そのため、詰める部分が数ミリ以上の厚みになる場合、一度に厚く盛って光を当てても、奥まで十分に硬化しないことがあります。

そこで歯科医師は、材料を2ミリ程度の薄い層に分けて少しずつ詰め、一層ごとに10秒前後光を当てて硬化させてから次の層を重ねる、という手順を踏みます。手間はかかりますが、この積み重ねによって、詰め物の奥までむらなく硬化させることができます。むし歯が大きく、詰める範囲が広い場合ほど層の数は増え、その分照射の回数も多くなります。

また、色の濃い材料は光を吸収・反射しやすく、同じ厚みでも硬化に時間がかかる傾向があります。前歯のように自然な色合いが求められる部位では、複数の色調の材料を重ねて仕上げることもあり、その場合は層ごとに材料の特性を見極めながら照射時間を調整する必要があります。歯科医師の経験や知識が、こうした細かな判断に影響してくる部分でもあります。

 

硬化が不十分だとどうなるか

内部の硬化が不十分なまま治療を終えると、次のような影響が起こり得ます。

    •    詰め物の強度が下がり、割れたり欠けたりしやすくなる

    •    歯との接着力が弱くなり、すき間から虫歯が再発しやすくなる

    •    硬化しきれなかった成分が残ることで、変色や刺激の原因になることがある

見た目や触った感触だけでは硬化の程度を判断しにくいからこそ、材料の性質に応じた層の厚みと照射時間を守ることが、仕上がりを大きく左右します。実際、詰めた直後は表面が硬く感じられても、数か月後に内部からゆるみが生じ、詰め物の一部が欠けたり、境目から着色が始まったりするケースもあります。こうしたトラブルの原因の一つが、この「見えないところの硬化不足」であることも少なくありません。

当院では、光照射器の出力を定期的に点検するとともに、詰める材料の厚みや色に応じて層の分け方と照射時間を調整し、奥までしっかり硬化させることを心がけています。数十秒の作業ですが、この工程を丁寧に行うかどうかで、数年後の詰め物の状態に差が出ると考えています。

 

患者さんにできること

治療後にできることとして、詰めた直後の数時間は着色しやすい飲食物(コーヒーやカレー、赤ワインなど)をできるだけ控えていただくと、色の変化を抑えやすくなります。また、詰めた部分の段差や噛み合わせの高さに違和感がある場合は、早めにご相談ください。硬化そのものに問題がなくても、微調整によって快適さが改善することがあります。

さらに、詰め物は経年で少しずつすり減ったり境目にすき間ができたりすることもあるため、定期検診の際にチェックを受けていただくと、トラブルを早期に見つけやすくなります。

小さな詰め物ひとつにも、材料の選定から光の当て方、そのあとの管理まで、多くの工程が積み重なっています。気になる点があれば、どんな些細なことでもお気軽にご相談ください。

監修者  鳥居 秀平  医療法人社団 悠和会 北野坂鳥居歯科医院/理事長

「医は仁術」の理念に基づき、患者様の気持ちに寄り添い、誠実で愛情ある治療を行うことを大切にしています。当院では、患者様の不安や希望を伺い、その方に適した治療を提供することを重視しています。オペ室や歯科用CT、マイクロスコープなどの設備を整え、安全で信頼できる治療環境を整えており、スタッフ一同、患者様の大切な歯を守るために努めております。

略歴

  • 1994年 日本大学松戸歯学部卒業
  • 1996年 英国マンチェスター大学研究在籍
  • 1998年 国立大学 東京科学大学大学 歯学部 文部教官
  • 1998年 東京科学大学付属歯科衛生士学校 講師
  • 1999年 国立大学法人 東京科学大学大学院医歯学総合研究科
    顎顔面機能再建学系専攻 文部科学教官
  • 2001年 北野坂鳥居歯科 開業

所属

  • 日本口腔インプラント学会 専門医、指導医
  • アジア口腔インプラント学会 認定医