自費の白い詰め物は「接着」が大切――化学反応を生かすSLDP|お知らせ

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自費の白い詰め物は「接着」が大切――化学反応を生かすSLDP

自費の白い詰め物は「接着」が大切――化学反応を生かすSLDP

 

白い詰め物であるコンポジットレジン(CR)は、歯に直接材料を詰めて形を整える治療です。自費のCR治療では、色や形の美しさに加え、歯と材料がしっかりつながる「接着」にも目を向けることが大切です。今回は、接着の土台となる歯の表面を整える前処理「SLDP」についてご紹介します。

 

■接着はケミカル――化学反応を生かす治療

歯とレジンの接着では、接着材が歯の表面に浸透して固まることに加え、接着材の成分と歯のミネラルとの化学的な相互作用も重要です。材料が固まる「重合」も化学反応の一つです。

つまり、「接着はケミカル」。材料の性質を理解し、反応が進みやすい条件を整えることが、接着の質を左右します。歯の表面の状態、水分、処理時間、光の当て方など、一つひとつの操作に意味があります。

 

■三文字のポイントは「脱蛋白」

歯を削ると、表面には「スメア層」と呼ばれる薄い層ができます。歯の削りかすなどからなるこの層には、ミネラルだけでなく、コラーゲンなどのタンパク質も含まれています。これらが接着材の浸透や、接着部分の安定性に影響することがあります。

そこで注目されるのが「脱蛋白」です。SLDPは、次亜塩素酸ナトリウムなどを用いて、スメア層に含まれるタンパク質を取り除く前処理です。層全体を取り去るのではなく、ミネラルを残しながら表面の性質を整えることがポイントです。

この方法は、東京医科歯科大学(現・東京科学大学)で講師を務めた中島正俊先生らが研究を重ねてきました。接着を妨げる要因を減らし、材料の性能を引き出すための工夫です。

 

■水洗の後には「還元」が重要

SLDPの研究では、6%の次亜塩素酸ナトリウムや、低濃度の次亜塩素酸が使われています。ただし、これらは性質が異なり、濃度や処理時間をそのまま置き換えることはできません。

タンパク質を除去した後には、薬液を十分に洗い流す必要があります。30秒間水洗する条件で行われた研究もありますが、水洗だけで酸化作用の影響を完全に解消できるとは限りません。残った影響は、接着材が固まる反応を妨げることがあります。

そこで用いるのが還元剤です。アクセルには芳香族スルフィン酸塩が含まれ、接着を妨げる酸化作用を抑える役割があります。研究では、脱蛋白処理と組み合わせて接着前に使用されています。水洗・乾燥、還元剤による処理、乾燥を経て、接着操作へ進みます。「洗い流すこと」と「化学的に影響を打ち消すこと」は、それぞれ大切な工程なのです。

 

■論文からわかること

2018年の研究では、次亜塩素酸とアクセルを組み合わせた前処理により、検討した複数の接着材で象牙質への接着強さが向上しました。象牙質とは、歯の表面を覆うエナメル質の内側にある組織です。むし歯の治療では、この象牙質との接着が重要になる場面があります。

また、2022年の研究では、次亜塩素酸とスルフィン酸系の還元剤を併用することで、温度変化を繰り返す試験の後も接着強さが維持されました。ただし、これらは実験室での結果です。効果は薬液や接着材の組み合わせによって異なり、すべての治療で同じ結果が得られるわけではありません。

 

■歯を長く使うために

自費CRの価値を考えるときは、見た目に加え、接着を支える工程にも注目してみてください。SLDPは、化学の理論に基づき、剥がれにくい接着を目指すための工夫の一つです。

 

実際の口の中では、噛む力や歯ぎしり、むし歯なども詰め物の寿命に影響します。歯と材料の状態に合った方法を選び、丁寧な接着操作と治療後のケアを重ねることが、歯を長く使うことにつながります。

監修者  鳥居 秀平  医療法人社団 悠和会 北野坂鳥居歯科医院/理事長

「医は仁術」の理念に基づき、患者様の気持ちに寄り添い、誠実で愛情ある治療を行うことを大切にしています。当院では、患者様の不安や希望を伺い、その方に適した治療を提供することを重視しています。オペ室や歯科用CT、マイクロスコープなどの設備を整え、安全で信頼できる治療環境を整えており、スタッフ一同、患者様の大切な歯を守るために努めております。

略歴

  • 1994年 日本大学松戸歯学部卒業
  • 1996年 英国マンチェスター大学研究在籍
  • 1998年 国立大学 東京科学大学大学 歯学部 文部教官
  • 1998年 東京科学大学付属歯科衛生士学校 講師
  • 1999年 国立大学法人 東京科学大学大学院医歯学総合研究科
    顎顔面機能再建学系専攻 文部科学教官
  • 2001年 北野坂鳥居歯科 開業

所属

  • 日本口腔インプラント学会 専門医、指導医
  • アジア口腔インプラント学会 認定医